「スポーツ応援が理解できない」「他人の勝敗に熱狂する意味がわからない」と感じても、決して不自然ではありません。観戦派と非観戦派では、スポーツに求める価値が違うと考えると分かりやすいです。
先に要点を整理すると、応援を理解できない人は「自分で体験すること・自分の成長」に価値を置きやすく、応援する人は「感動・勝利の共有・チームとのつながり」に価値を感じています。どちらかが正しく、どちらかがおかしいという話ではありません。
スポーツ応援が理解できないのは変?まず結論を整理
「自分が試合をしているわけでもないのに、なぜそこまで喜べるの?」
「他人のチームが勝っても、自分には何も残らないのでは?」
スポーツ観戦に興味がない人なら、こんな疑問を持つことがありますよね。
でも、スポーツそのものへの関心が全員に同じようにあるわけではありません。
MMD研究所が2023年8月25日に公表した「スポーツ観戦/視聴に関する実態調査」では、18〜69歳の男女1万5,000人のうち、「興味のあるスポーツがある」と答えた人は52.8%でした。裏返せば、この設問で「興味のあるスポーツがある」と答えなかった人も47.2%いたことになります。 MMD研究所
また、株式会社クロス・マーケティングが全国47都道府県の20〜69歳男女2,500人を対象に2024年12月に行った調査では、最近1〜2年間に24種類のスポーツのいずれかを観戦した人は60%でした。つまり、調査条件上は約4割が最近1〜2年間の観戦経験なしということになります。 クロス・マーケティング
こうした数字を見ても、スポーツを見ることに強い関心を持たない人は特別珍しい存在ではありません。
私はスポーツとの付き合い方を考えるとき、便宜的に次のように整理すると分かりやすいと考えています。
- 自分でやる価値を重視する人:走る、登る、プレーする、技術を身につけることに満足を感じる
- 見る体験を重視する人:選手の活躍、予想できない展開、感動を楽しむ
- 共有する体験を重視する人:家族や仲間、地域の人と一緒に盛り上がることを楽しむ
もちろん、これは心理学上の正式な性格分類ではなく、私がスポーツとの距離感を整理するために使っている考え方です。
一人の中にも複数の価値観があります。
「普段は自分で走りたいけれど、オリンピックは見る」という人もいれば、「野球観戦は好きだけれどサッカーには興味がない」という人もいますよね。
ですから、スポーツ応援を理解できない=冷たい人、共感性がない人、変わった人という結論にはなりません。
なぜスポーツ応援を「意味ない」「無駄」と感じるの?
スポーツ応援を意味ないと感じる理由は、一つではありません。
ただ、特に理解しやすいのは、時間を使った結果が自分自身へ直接返ってくるかどうかという違いです。
たとえば2時間あったとします。
その2時間でランニングをすれば、自分自身が走った経験が残ります。テニスを練習すれば、ボールを打った経験や技術につながる可能性があります。
一方、2時間サッカーを見ても、自分が2時間運動したことにはなりません。
「だったら見るより自分でやりたい」
そう感じるのは、とても自然ですよね。
実際、2024年6月30日にHackerNoonで公開されたBenoit Malige氏の記事「Don’t Waste Your Time Watching Sports」は、かなり強い言葉ではあるものの、スポーツ観戦へ時間を使うより、自分自身の目標やスキル、人生に時間を向けるべきだという立場から書かれています。 HackerNoon
ただし、ここは区別しておきたいところです。
これはスポーツ観戦に価値がないことを証明した学術研究ではなく、Benoit Malige氏による個人的な論考です。
また、記事中には脳や依存について強く断定した記述もありますが、この記事ではそれらを科学的事実として採用しません。
一方で、「他人の成功を見るより、自分の人生を進めたい」という価値観そのものは、スポーツ応援を理解できない人の感覚を考えるヒントになります。
アウトドア好きの私にも、この感覚はよく分かります。
晴れた休日に「今日はテレビでスポーツを見るより、自分が外へ出たい!」と思うことがあります。
テレビの前でマラソンを見るより、自分で5km走ったほうが楽しい。
登山番組を見るより、低山でもいいから自分の足で歩きたい。
そういう人にとってスポーツは、観戦する娯楽ではなく参加する遊びなのかもしれません。
ここで大切なのは、「スポーツが嫌い」と「スポーツ観戦に価値を感じない」は同じではないことです。
むしろスポーツが大好きだからこそ、
「見るよりやりたい!」
という人だっているんですよね。
では、スポーツを応援する人は何に意味を感じている?
反対に、応援する側は何を楽しんでいるのでしょうか。
ここで参考になるのが、トイウェア株式会社が2024年8月27日に公表した「スポーツチームの応援に関する実態調査」です。
調査は2024年8月7日〜8日にインターネットで実施され、対象は特定のスポーツチームを5年以上応援し、現在も応援を続けているファン106人でした。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
重要なので最初に一度だけ注意しておくと、この106人は一般の日本人を無作為抽出した集団ではありません。
もともと長期間チームを応援している人を対象にした調査なので、「日本人の63.2%がこう考えている」という読み方はできません。
そのうえで、長期ファンが何に魅力を感じているのかを見ると、とても興味深い結果があります。
スポーツ観戦が好きな理由 割合
チームや選手の活躍に感動するから 63.2%
好きなチームが勝つと自分ごとのように喜べるから 60.4%
ポジティブな感情になれるから 28.3%
ストレスが解消されるから 21.7%
仲間と喜びを共有できることが嬉しいから 20.8%
自分がやっている・いたスポーツだから 18.9%
最も多かったのは、「チームや選手の活躍に感動するから」の63.2%。
次いで「好きなチームが勝つと自分ごとのように喜べるから」が60.4%でした。 エキサイト+1
ここが「スポーツ応援なんて意味ない」と感じる人との大きな違いだと思います。
応援する人は必ずしも、
「この観戦によって自分に何が残るのか」
という成果を求めているわけではありません。
選手がギリギリの場面で逆転する。
ずっと苦戦していた選手が活躍する。
あと1点が入るかどうか分からない。
そんな時間に心を揺さぶられること自体を楽しんでいるんですね。
映画を見ても、自分が主人公になるわけではありません。
音楽ライブへ行っても、自分がステージに立つわけではありません。
それでも「楽しかった」「感動した」と感じるなら、その時間には本人なりの価値があります。
スポーツ観戦も、この体験としての娯楽に近いと考えると理解しやすいでしょう。
なぜ他人の勝利を「自分ごと」のように喜べるの?
では、なぜ自分がプレーしていない試合なのに、勝つと自分のことのように嬉しくなるのでしょうか。
この疑問を考える手がかりになるのが、社会心理学で知られるBIRGing(Basking in Reflected Glory)です。
BIRGingは、自分が関係を感じている他者や集団の成功と自分との結びつきを示し、その成功の「反射された栄光」を享受するような現象を指します。
Robert B. Cialdini氏らが1976年に発表した研究では、300人を超える大学生を対象とした3つのフィールド実験から、本人がその成功に直接貢献していなくても、成功した対象との結びつきを示す傾向が確認されました。 ResearchGate+1
ここで、先ほどのトイウェア株式会社の数字を思い出してみましょう。
長期ファン106人の60.4%が、観戦を好きな理由として「好きなチームが勝つと自分ごとのように喜べるから」を選んでいます。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
もちろん、
「60.4%という数字はBIRGingによって生じた」
と断定することはできません。
トイウェアの調査はBIRGingを測定する心理実験ではなく、両者の因果関係を検証したものでもないからです。
ただ、私はこの二つを並べると、スポーツファンの感覚がかなり分かりやすくなると感じます。
最初は単なる「○○チーム」だったものが、何年も追い続けるうちに、
「私たちのチーム」
「自分の地元のチーム」
「子どもの頃から応援してきたチーム」
へ変わっていく。
すると、チームの出来事が完全な「他人事」ではなくなっていくわけです。
トイウェアの同調査では、特定チームを応援し続ける理由として、「勝利の喜びを共有したいから」と「地元のチームだから」がともに50.0%で最多でした。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
つまりスポーツ応援を理解するときは、「他人がプレーしているのに、なぜ?」だけで考えるより、
そのチームをどのくらい自分とつながりのある存在として感じているか
を見るほうが理解しやすいんですね。
スポーツ応援の意味は勝敗だけ?人や地域とのつながりもある
スポーツ応援を「試合を見る2時間だけ」と考えると、確かに生産性のない時間に見える人もいるでしょう。
でも現地観戦まで含めると、少し違った姿が見えてきます。
トイウェア株式会社の調査では、長期ファン106人の観戦方法として「自宅での観戦」が87.7%で最多でしたが、「スタジアムや競技場での現地観戦」も50.9%でした。
さらに、チームや選手をどのようにサポートしたいかという質問では、「試合に足を運ぶ」が47.2%で最多となっています。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
ファンコミュニティについて「かなり興味がある」10.3%、「やや興味がある」32.1%で、合わせて42.4%。
その45人に、コミュニティへ加入した場合に仲間と何をしたいか尋ねると、75.6%が「現地での試合観戦」を選びました。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
そして別の調査でも、現地ならではの魅力が確認されています。
クロス・マーケティングの2024年調査では、競技会場でリアル観戦した人が楽しんでいることとして、「スタジアムでの応援の一体感」と「迫力やスピード感」がともに60%台でした。 クロス・マーケティング
ここから見えてくるのは、
スポーツ観戦=座って他人の試合を見るだけ
とは限らないことです。
試合があるから街へ出る。
駅からスタジアムまで歩く。
友達と食事をする。
隣に座った人と同じプレーで喜ぶ。
親子で観戦する。
地元のチームをきっかけに地域へ愛着を持つ。
こうした出来事まで含めて、一日分のレジャーになるんですね。
私はここに、アウトドアとかなり似たものを感じます。
登山も結果だけ取り出せば、
「山へ登って、また同じ高さまで下りてくる」
行動です。
効率だけで考える人なら、「なぜ疲れるために山へ行くの?」と思うかもしれません。
でも登山が好きな人にとっては、頂上だけが目的ではありませんよね。
森の匂い、途中の景色、仲間との会話、休憩中に飲むコーヒー、歩き終えたときの充実感まで全部が体験です。
スポーツ応援も、最終スコアだけでは価値を測れない。
これが、理解できない側と応援する側のすれ違いを解く大きなポイントだと思います。
応援は選手のため?それとも観客自身のため?
「観客が楽しめるのは分かった。でも、応援って選手本人には意味があるの?」
ここも気になりますよね。
観客の存在が競技へ影響する可能性については研究があります。
たとえばCOVID-19による無観客環境を利用し、11大会・1,027試合のラグビーユニオンを分析した研究では、観客不在時にホームチームの勝利数や得失点差が低下したことが報告されています。 arXiv
ただし、これは「一人ひとりの声援を聞いた選手の能力が上昇した」という意味ではありません。
観客による社会的圧力、ホーム環境など複数の要素が関係するため、
「応援すれば必ず選手が強くなる」
と単純化するのは避けたほうがよいでしょう。
競技や選手、場面によっても受け止め方は違うはずです。
私は、応援の価値を「選手のパフォーマンスを何%上げたか」だけで判断する必要はないと思っています。
観客が楽しむ。
仲間とつながる。
選手を支えたいと思って会場へ出かける。
会場全体でスポーツの場をつくる。
それも応援という行動の一部です。
スポーツ応援を理解できない人ほど、
「応援=選手を勝たせるための行為」
と考えると意味が見えにくくなるかもしれません。
むしろ、
「試合を中心に、人が感情や時間を共有する参加型の娯楽」
と見ると、なぜ多くの人がスタジアムへ足を運ぶのか理解しやすくなります。
「スポーツ応援は意味ない」派と応援派はどちらが正しい?
結論として、どちらか一方だけが正しい問題ではありません。
ここで私がいちばん大事だと思うのは、
「自分には価値がない」と「誰にとっても価値がない」は違う
ということです。
スポーツを2時間見るより、自分で走ったほうが充実する人。
資格の勉強をしたい人。
家族と出かけたい人。
映画を見たい人。
山へ行きたい人。
その人にとってスポーツ観戦の優先順位が低いなら、無理に見る必要はありません。
一方、応援する人はその2時間で、感動したり、ハラハラしたり、家族と話したり、知らない人と同じ瞬間に喜んだりしています。
クロス・マーケティングの2024年調査では、最近1〜2年間にスポーツを観戦した人のうち、スポーツ観戦で感動した経験がある人は56%でした。 クロス・マーケティング
つまり同じ「2時間」でも、得ているものが違うわけです。
私はこれを、成果重視と体験重視の優劣ではなく、「休日に何を持ち帰りたいか」の違いだと考えています。
「今日は上達した」という満足が欲しいなら、自分でスポーツをする。
「今日はすごいものを見た」という感動が欲しいなら、観戦する。
「みんなで盛り上がった」という記憶が欲しいなら、応援する。
もちろん全部楽しんでもいいんです。
このように考えると、「応援する意味が分からない人」と「応援せずにはいられない人」が存在する理由も、かなりシンプルになります。
私見|スポーツ応援の価値は「何を生産したか」だけでは測れない
ここからは、アウトドア・スポーツライターとしての私自身の考えです。
スポーツ応援について考えていて、私は「趣味に生産性を求めすぎると、多くの遊びが意味を失ってしまう」と感じました。
キャンプへ行っても、何かを生産するわけではありません。
サイクリングをして元の場所へ帰ってくれば、移動だけならプラスマイナスゼロです。
山へ登って下りてきても、仕事の成果が増えるわけではありません。
でも私たちは、そんな時間を楽しみますよね。
風が気持ちよかった。
初めての景色を見られた。
友達と笑った。
思ったより遠くまで歩けた。
また週末に出かけたくなった。
それだけでも、休日としては十分に価値があります。
スポーツ応援も同じではないでしょうか。
勝利そのものは選手のものです。
観客が「自分がホームランを打った」「自分がゴールを決めた」ことになるわけではありません。
それでも、その瞬間を誰かと共有した記憶は観客自身のものです。
さらに興味深いのが、トイウェア調査の「好きなチームが勝つと自分ごとのように喜べる」60.4%と、心理学で研究されてきたBIRGingという考え方です。
長く応援するほど必ずBIRGingが強くなる、と今回の資料から結論づけることはできません。
ただ、地元、家族、幼い頃からの記憶などを通してチームが自己イメージの一部に近づけば、勝敗が大きく心を動かすようになる可能性は考えられます。
だから、スポーツ応援を理解できない人に対して私は、
「一度応援すれば分かるよ!」
と押しつける必要はないと思います。
まずは、自分が休日に何をすると楽しいのかを基準にすれば十分です。
見るより動きたいなら、外へ出てみましょう!
逆に、
「スタジアムの雰囲気だけはちょっと気になる」
と思ったなら、一度だけ現地へ行ってみるのも面白いですよ。
試合そのものより、会場の音やスピード感、街の雰囲気が好きになるかもしれません。
そして実際に見て、
「やっぱり私は観戦より自分でプレーするほうが好き!」
と思ったなら、それも立派な答えです。
スポーツとの心地よい距離は、一人ひとり違っていい。
私はそう考えています。
まとめ|スポーツ応援を理解できなくてもおかしくない
スポーツ応援を「意味ない」「他人の勝敗なのになぜ熱狂するの?」と感じても、おかしくありません。
MMD研究所の2023年調査では、18〜69歳1万5,000人のうち「興味のあるスポーツがある」と答えた人は52.8%。クロス・マーケティングの2024年調査でも、最近1〜2年間にスポーツを観戦した人は60%でした。スポーツへの関わり方には、もともとかなり個人差があります。 MMD研究所+1
一方、特定チームを5年以上応援している106人を対象としたトイウェア株式会社の2024年調査では、「選手やチームの活躍に感動する」が63.2%、「勝つと自分ごとのように喜べる」が60.4%。応援を続ける理由では「勝利の喜びを共有したい」「地元のチームだから」がそれぞれ50.0%でした。 プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES
つまり、応援する側が楽しんでいるのは勝敗だけではありません。
感動、予測できない展開、人との共有、地域とのつながりまで含めた体験に価値を感じています。
反対に、観戦より自分で運動したい、別の目標へ時間を使いたいという選択にも十分な合理性があります。
「応援には意味があるのか?」という問いへの私の答えは、シンプルです。
自分にとって楽しいなら意味がある。楽しくないなら、無理に応援しなくていい。
スポーツは見る人だけのものでも、プレーする人だけのものでもありません。
自分に合った距離で楽しんでみましょう!
よくある質問
スポーツ応援の意味がわからないのは冷たい性格だからですか?
いいえ。スポーツ観戦より、自分自身で運動することや別の活動へ時間を使うことに価値を感じる人もいます。
調査でもスポーツへの興味や観戦経験には個人差が確認されているため、観戦に関心がないことだけで性格の良し悪しを判断する根拠にはなりません。 MMD研究所+1
なぜ自分が試合をしていないのに勝つと嬉しいのですか?
好きなチームを自分と関係のある集団として感じていることが一つの手がかりになります。
社会心理学ではBIRGingという現象が研究されており、成功した他者や集団との結びつきを示す行動が確認されています。ただし、すべてのスポーツファンの喜びをBIRGingだけで説明できるわけではありません。 ResearchGate
スポーツ応援が理解できない人でも現地観戦は楽しめますか?
楽しめる可能性はあります。
クロス・マーケティングの2024年調査では、現地観戦者が楽しむ要素として「スタジアムでの応援の一体感」や「迫力・スピード感」が60%台でした。試合結果だけでなく、会場へ出かけるレジャーとして一度体験してみるのも一つの方法です。 クロス・マーケティング
青葉 結衣(あおば ゆい)
アウトドア・スポーツライター

